ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

王道ギターロックに挑んだ2011年第2弾シングル「short hair」

制作、リリース、ツアーのサイクルを精力的にこなしながら、結成10周年のメモリアルイヤーを駆け抜けているBase Ball Bear。6月にリリースしたシングル「yoakemae」は、彼らの新たなフェーズをリスナーに知らしめるハイブリッドな楽曲だった。

そして、ニューシングル「short hair」では、あえて王道のギターロックにフォーカスを当てることで、「yoakemae」とは真逆ともいえる角度でバンドが今立っている地平を明らかにしている。遊び心に富んだ実験性をキャッチーに昇華しているカップリングの「ido feat. 呂布」も含めて、このシングルに込めた狙いを小出祐介(Vo, G)に訊いた。

取材・文 / 三宅正一 インタビュー撮影 / 中西求

結成以来初めて堀之内とケンカした

──小出君のTwitterを追いかけていると、4thアルバムに向けてなかなか過酷な制作の日々が続いていることがわかるんですけど(笑)。

そうですね(笑)。どう大変だったかは、また後日話すことになると思うんですけど、久々にこの感じがきたなっていう。

──制作と並行して、7月初旬まで全国ツアーを回っていましたが、どうでしたか?

すごく良かったです。改めてBase Ball Bearがどういうバンドなのかを、自分たちでしっかり確認できたツアーで。もちろん、お客さんが満足するのが一番なんですけど、それにプラスしてバンドが満足できるという部分も大きくて。そこを突き詰めていったら、Base Ball Bearのバンド像、バンド論みたいなところと向き合わざるを得なくなったツアーだったんですよね。4、5、6、7月とツアーをやって、5月くらいからメンバー同士の話し合いがすごく長くなっていって。その中でいろいろありましたよ。僕と堀之内(大介 / Dr)が10年間で初めてケンカしたりとか(笑)。

──どういうことで?

インタビュー風景

まず熊本公演が終わった後にライブについての話し合いをして。いつもは楽屋でそういう話をするんですけど、そこで終わらなくて続きをホテルでやったんですよ。

──そういうことって今までなかったんですか?

なかったですね。その日のライブを記録しているビデオがあったから、みんなでそれを観て。ここをこうしようよっていう話をして。その反省会を踏まえながら2日後の山口公演に臨んだんですけど、本編が終わって1回引っ込むじゃないですか。楽屋に戻ったところで、堀之内が俺たち3人、特に湯浅(将平 / G)に対して「あそこがダメなんだよ!」って強めの言葉を投げたんです。で、俺がキレて。まだアンコールもやるかもしれないし、もしかしたらダブルアンコールだってやるかもしれない。ライブが完結していない状態で、なんでそういうことを言うんだよって。しかも俺は本編のライブがそんなに悪いと思ってなかったんです。だから余計にカチンときて。俺、普段は感情的に怒ることはないんですけど、そのときは気持ちが先にいくような感じで。で、そのままアンコールやって、楽屋に戻ったときにTシャツを脱いだ勢いでまたブワーッて言い合いになって。堀之内に「なんであのタイミングであんな怒った言い方するんだよ!?」って言ったら、堀之内は「いや、怒ってはいねえよ!」って返してきて(笑)。

──(笑)。

堀之内は僕ら3人とタイプが違うというか、人間的に熱血タイプなんですよね。3人はどちらかといえば常にフラットな状態なんですけど。そういう性格の違いが浮き彫りになったというか。結局そこからは冷静な話し合いになって、うまくまとまったんですけど。

──バンド結成初期みたいなエピソードだね(笑)。

ホントに(笑)。今回のツアー自体が結成10周年を記念したものという側面があったし、セットリストの内容的にもキャリアを網羅するような感じで。バンドとしてもより自分たちの本質を見せたいという気持ちがあったから。それを突き詰めていったら、どんどんそもそも論になっていって。

ライブステージがカッコいいバンドが一番

──そういうツアーを経て、改めてどんなことに気付きましたか。

常々言ってることなんですけど、まずBase Ball Bearというバンドは、あくまでもギターバンドだということ。シンセもクリックもない中でライブをやっていると、必然的にいろんなことを同期させる演出ができないんですよね。例えばVJとテンポを合わせることもバンドの演奏を見ながらやってもらうしかない。

──すべて人力で。

そう、演奏以外の要素も全部人力でやらないといけない。だったら、人力でいろんなことを派手にしていくという考え方よりも、そもそもメンバー4人がちゃんとカッコいい演奏ができていて、ステージ上のたたずまいが100%だったらそれ以上は必要ないんじゃないかと。まあ、究極的な話ではあるんですけど。でも、俺らが学生時代にバンドを始めたときにどういうバンドが好きだったかっていったら、ステージでカッコいいバンドが一番だと思っていたから。だったら俺らもそういうバンドを目指してやっていくべきなんじゃないかと。

ニューシングル「short hair」 / 2011年8月31日発売 / 1000円(税込) / TOCT-40355 / EMI Music Japan

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CD収録曲
  1. short hair PVを観る
  2. ido feat. 呂布
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Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。「GIRL FRIEND」「ELECTRIC SUMMER」「STAND BY ME」などミニアルバム、シングルを連発し、同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2010年9月、3.5thアルバムと位置付けたコンセプトアルバム「CYPRESS GIRLS」「DETECTIVE BOYS」を発表。2011年6月にバンド結成10周年のアニバーサリーイヤーの幕開けを飾るシングル「yoakemae」をリリースした。